終わりにうたう詩
雲を切り裂く光が二人の部屋にまで届いてありきたりな言葉で飾るテレビがうるさい
何食べたい?いつもと同じことをいつもと同じ顔で聞く声が今、部屋で弾けそう
雨音と窓を揺らす風の音に野菜を切る一定のリズム 後悔のなかった日々などありもしなかったのかもしれない それでも日常を越えてきたんだ
ふと何てこともないことを思い出して大したことをした気になる
優しい匂いが立ち込めて君の得意なメニューが現れる 今更、美味しいってつぶやくのもなんだか変だけど伝えたいと思ったよ
時間によって僕らに及ぼす変化はこれからは一つもないけど この瞬間からの時間の正確を少し呪いたいと思った僕は誠実さをどこに落としてきたんだろう
気付けば雨音もしなくなって茜色が眩しい
君は忙しなく片づけを始めて荷物もまとめてる 雨が上がれば君は出て行くんだろう
何度も話し合ったけど埋まらなかった隙間には自分のことで一杯になっていったふたり
華奢な背中が少し大きく感じて戻らないすべてを思い知りました。
明日から交わす言葉もなくなる ふたり交わらない場所がふたりの居場所
頭ではわかってるから駅まで送るよ
「平成の終わりに同棲が終わる」君が部屋を出る時に言ったことが妙に意地悪で可愛らしくて君らしかった
最後に言葉を間違えぬよう「じゃあね」ではなくて「さようなら」
互いに笑顔で云えたから それで十分さ